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鍼灸学生必見★気虚、血虚、陰虚、陽虚の治療穴の語呂合わせと覚え方【東洋医学9】

2021年5月29日

 

症例ごとの経穴の覚え方

鍼灸学生必見★全身の気機と臓腑の関係の覚え方【東洋医学8】でもお伝えしましたが、実際の東洋医学的診断は「肝気鬱滞(カンウツキタイ)」、「脾腎不和(ヒジンフワ)」や「痰湿阻肺(タンシツソハイ)」など約40種類ぐらいに区分され、それぞれの治療に適した基本の5穴があります。これを漠然と覚えるのは大変なので何かしらの法則がないかと思いまとめてみました。

 

兪原配穴と募合配穴

五臓(肝・心・脾・肺・腎)が病んでいる時、兪穴と原穴の組み合わせである兪原(ユゲン)配穴が治療穴になります。

例えば肝の兪原配穴は肝兪(兪穴)と太衝(原穴)です。

腑(胆・胃)が病んでいる時、募穴と合穴の組み合わせである募合(ボゴウ)配穴が治療穴になります。

例えば胃の募合配穴は中脘(慕穴)と足三里(合穴)です。

慕穴や五要穴の暗記は必須になってきますので詳しくはここからどうぞ

原穴 郄穴 絡穴 五要穴覚え方 語呂合わせ ゴロ

 

気虚証、血虚証、陰虚証、陽虚証これらは全て気血津のどれかが不足した状態です。基本的には補法と言って補う治療方法になります。

気虚証

基本となる気虚証の治療穴は胃経を中心に考えます。

気虚の治療穴
気虚の治療穴

 

胃は腑に属するので募合配穴→中脘(任脈、胃の慕穴)と足三里(胃経の合穴、四総穴、胃の下合穴)、そして気を整える気海(任脈)をひとセットとして考えます。これに膻中(任脈、気会)と合谷(大腸経の原穴、四総穴)で5穴です。

気虚のメインである中脘、足三里、気海を覚えるゴロは

帰郷(気虚)の中間(中脘)で足を三里(足三里)伸ばす機会(気海)

気虚証
気虚証

 

脾気虚証

脾は蔵に属すので兪原配穴で脾兪(脾の背部兪穴、膀胱経)と太白(脾経の原穴)。これに気虚の基本セットである中脘(胃の慕穴、八会穴の腑会、任脈)足三里(胃経の合穴、四総穴、胃の下合穴)気海(任脈)が加わって5穴です。

脾気虚証
脾気虚証

 

腎気虚証

腎は蔵に属すので兪原配穴で腎兪(腎の背部兪穴、膀胱経)と太渓(腎経の原穴)。これに気虚の基本セットである中脘(胃の慕穴,八会穴の腑会、任脈)足三里(胃経の合穴、四総穴、胃の下合穴)気海(任脈)が加わって5穴です。

腎気虚証
腎気虚証
 

心気虚証

心は蔵に属すので兪原配穴で心兪(心の背部兪穴、膀胱経)と神門(心経の原穴)。これに気虚の基本セットである中脘(胃の慕穴、八会穴の腑会、任脈)と足三里(胃の合穴、四総穴、胃の下合穴)、そして気を整える膻中(任脈)が加わって5穴です。

心気虚証
心気虚証

 

肺気虚証

気虚証の中で唯一「胃」の基本セットが使えないのが肺気虚証です。肺は蔵に属すので兪原配穴で肺兪(肺の背部兪穴、膀胱経)と太淵(肺経の原穴)。そして脾の兪原配穴の脾兪(脾の背部兪穴、膀胱経)と太白(脾経の原穴)。これに膻中(任脈)を加えた5穴になります。

肺気虚証
肺気虚証

 

脾肺気虚証(脾肺両虚)

脾は「生痰の源」、肺は「貯痰の器」と呼ばれるように、共に痰湿の症状が出やすい臓腑です。気機の調節でも影響しあっているので、どちらかが失調するともう一方も失調する可能性が高く、脾も肺も気虚証になってしまったのが脾肺気虚証です。肺と肺はそれぞれ蔵に属すので肺の兪原配穴の肺兪(肺の背部兪穴、膀胱経)と太淵(肺経の原穴)、そして脾の兪原配穴の脾兪(脾の背部兪穴、膀胱経)と太白(脾経の原穴)。これに足三里(胃経の合穴、四総穴、胃の下合穴)を加えた5穴になります。

脾肺気虚証
脾肺気虚証
 

腎の症状に気虚が重なった腎気虚証と似ているのが

腎精不足証

腎精とは気血精全てを動かす元になるエネルギーの事で、これが不足すると生命活動に問題が発生します。腎気虚証の症状は腰膝酸軟や耳鳴り、喘息など腎の症状が出ますが、腎精不足の場合は発育不足、不妊症、閉経など生命とダイレクトに関わる症状が出ます。

治療穴としては腎の癒合配穴腎で腎兪(腎の背部兪穴、膀胱経)と太渓(腎経の原穴)。これに後天の精を生成し、先天の精を補う足三里(胃経の合穴、四総穴、胃の下合穴)、三陰交(肝、脾、腎が交わる所)脾兪(脾の背部兪穴、膀胱経)を加えた5つです。

腎精不足証
腎精不足証

 

血虚証

血虚の治療穴
血虚の治療穴

 

基本となる血虚証の治療穴は血海(脾経)隔兪(八会穴の血会、膀胱経)三陰交(肝、脾、腎が交わる所)が中心です。これに足三里(胃経の合穴、四総穴、胃の下合穴)と脾兪(脾の背部兪穴、膀胱経)が加わって5穴です。

血虚のメインである血海、隔兪、三陰交を覚えるゴロは

結局( 血虚)、(隔兪)結界山陰で交わる(三陰交)

 

血虚証
血虚証

 

肝血虚証

肝は蔵に属すので兪原配穴で肝兪(肝の背部兪穴、膀胱経)と太衝(肝系の原穴)。これに血虚の基本セットである血海(脾経)隔兪(八会穴の血会、膀胱経)三陰交(肝、脾、腎が交わる所)が加わって5穴です。

 
肝血虚証
肝血虚証

 

心血虚証

心は蔵に属すので兪原配穴で心兪(心の背部兪穴、膀胱経)と神門(心系の原穴)。これに血虚の基本セットである血海(脾経)隔兪(八会穴の血会、膀胱経)三陰交(肝、脾、腎が交わる所)が加わって5穴です。

 
心血虚証
心血虚証

 

気血両虚証(心脾両虚)

気虚と血虚の両方の症状が出ているのが気血両虚証(心脾両虚)です。血を主る(主血)のが心。そして気によって血は体内を巡るための運化を主るのが脾です。よって(心の背部兪穴、膀胱経)と脾兪(脾の背部兪穴、膀胱経)そして気を補うのが気海(任脈)、血を補うのが血海(脾経です。そしてこれに足三里(胃経の合穴、四総穴、胃の下合穴)を加えた5穴になります。

気血両虚証(心脾両虚)
気血両虚証(心脾両虚)

 

陰虚証

陰虚証の治療穴
陰虚証の治療穴

 

陰虚証と腎陰虚証

基本となる陰虚証の治療穴は腎経を中心に考えます。陰虚証の症状は陰が不足しているために実熱症状が出たもの、腎陰虚証は隠居証に腎の症状が加わったものですが、基本の治療穴5穴は同じものです。

腎は蔵に属すので兪原配穴で腎兪(腎の背部兪穴、膀胱経)と太渓(腎経の原穴)。そして同じく腎経に属する三陰交(肝、脾、腎が交わる所)復留(胃経の経穴)照海(八脈公会穴、胃経)をセットとして考えます。合わせて5穴です。

陰虚のメインである三陰交、復留、照海を覚えるゴロは

隠居( 陰虚)に、福利(復留)がいい山陰(三陰交)を紹介(照海)される

陰虚証
陰虚証と腎陰虚証

 

肝陰虚証

肝は蔵に属すので兪原配穴で肝兪(肝の背部兪穴、膀胱経)と太衝(肝経の原穴)。これに陰虚の基本セットである三陰交(肝、脾、腎が交わる所)復留(胃経の経穴)照海(八脈公会穴、胃経)が加わって5穴です。

 
肝陰虚証
肝陰虚証

 

心陰虚証

心は蔵に属すので兪原配穴で心兪(心の背部兪穴、膀胱経)と神門(心経の原穴)。これに陰虚の基本セットである三陰交(肝、脾、腎が交わる所)復留(胃経の経穴)照海(八脈公会穴、胃経)が加わって5穴です。

心陰虚証
心陰虚証

 

肺陰虚証

肺は蔵に属すので兪原配穴で肺兪(肺の背部兪穴、膀胱経)と太淵(肺経の原穴)。

これに陰虚の基本セットである三陰交(肝、脾、腎が交わる所)復留(胃経の経穴)照海(八脈公会穴、胃経)が加わって5穴です。

肺陰虚証
肺陰虚証

 

胃陰虚証

胃は腑に属するので募合配穴→中脘(胃の慕穴、任脈)と足三里(胃経の合穴、四総穴、胃の下合穴)、これに脾兪(脾の背部兪穴、膀胱経)と胃兪(胃の背部兪穴、膀胱経)そして三陰交(肝、脾、腎が交わる所)が加わって5穴です。

胃陰虚証
胃陰虚証

 

肝腎隠居証

陰虚証に肝と腎の症状が出ているのが肝腎陰虚証です。肝は蔵に属すので兪原配穴で肝兪(肝の背部兪穴、膀胱経)と太衝(肝経の原穴)。そして腎の兪原配穴の腎兪(腎の背部兪穴、膀胱経)と太渓(腎経の原穴)。これに三陰交(肝、脾、腎が交わる所)を加えた5穴になります。

肝腎隠居証
7 肝腎隠居証

 

肺腎陰虚証

陰虚証に肺と腎の症状が出ているのが肺腎陰虚証です。肺は蔵に属すので兪原配穴で肺兪(肺の背部兪穴、膀胱系)と太淵(肺経の原穴)。そして腎の兪原配穴の腎兪(脾の背部兪穴、膀胱経)と太渓(腎経の原穴)。これに経渠(肺の経穴)を加えた5穴になります。

肺腎陰虚証
肺腎陰虚証

 

陽虚証

陽虚証の治療穴
陽虚証の治療穴

基本となる虚証の治療穴は関元(督脈)命門(督脈)が中心です。これに大椎(督脈)神闕(督脈)と足三里(胃経の合穴、四総穴、胃の下合穴)が加わって5穴です。

陽虚のメインである関元、命門を覚えるゴロは

陽気な(陽虚)、名門(命門)の関元(関元)

陽虚証
陽虚証

 

心陽虚証

陽虚証に心の症状が出ているのが心陽虚証です。心は蔵に属すので兪原配穴で心兪(心の背部兪穴、膀胱経)と神門(心経の原穴)。これに陽虚証の基本セットである関元(督脈)命門(督脈)。そして大椎(督脈)が加わった5穴です。

心陽虚証
心陽虚証

 

脾陽虚証

陽虚証に脾の症状が出ているのが脾陽虚証です。脾兪(脾の背部兪穴、膀胱経)と腎兪(腎の背部兪穴、膀胱経)。そしてこれに陽虚証の基本セットである関元(督脈)命門(督脈)そして神闕(督脈)が加わって5穴です。

脾陽虚証
脾陽虚証

 

腎陽虚証

陽虚証に腎の症状が出ているのが腎陽虚証です。腎は蔵に属すので兪原配穴で腎兪(兪穴)と太渓(腎経の原穴)。そしてこれに陽虚証の基本セットである関元(督脈)命門(督脈)そして湧泉(胃経の井穴)が加わって5穴です。

腎陽虚証
腎陽虚証

 

その他の語呂合わせ

 東洋医学の考え方や経絡経穴の語呂合わせ

実在しない臓器や実在していても実際の臓器とは違う働きをする東洋医学の生理学。そして360個以上もある経穴の名前を覚えるのはもはや呪文を唱えるようなものです。そこで自分なりに整理した五要穴以外の語呂や東洋医学の考え方などを考えました。よかったら参考にして見てください。

 

解剖学や生理学の語呂合わせ

鍼灸の国家試験を受けるときには他にも解剖学や生理学を覚えなければなりません。こちらも語呂を考えたので良ければお使いください。

2021年5月29日

Posted by hana