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沖縄の本当の神話1【ニライカナイとオボツカグラ】

2021年3月3日

 

沖縄に住んで1番びっくりしたのは沖縄の神様は本州の神様と違う神様がいらっしゃるという事です。よくよく考えたら沖縄は元々琉球王国で国の成り立ちが違います。うちなんちゅー(沖縄県民)は学校で歴史を習うようですが、本州から引っ越した私にはさっぱり歴史が分かりませんでした。それでせっかくなので調べてみる事にしました。

本州の神様は天空にある天の高原(あまのたかはら)から降りて来られた天照大神(あまてらすおおみかみ)ですが、沖縄の神様は海の向こうにあるニライカナイからやって来たアマミキヨ(とシネリキヨ)です。これは沖縄に住んでいればよく聞く話です。

 

ニライカナイとは

ニライとカナイに分けられ、ニライは根を指すと言われています。根とは生が生まれる場所、つまり始まりの場所と考えられていて、カナイは遠い彼方(かなた)を指すと言われています。※カナイの意味は諸説あります

ニライカナイで魂が生まれて寿命が尽きて死ぬとまたニライカナイに戻っていきます。やがて世代交代が進んで7代目に最初の先祖がその親族の守護神になると信じられています。ニライカナイは守護神が誕生する場所でもあるのです。

地平線上にある(横社会)と信じられているニライカナイは東(正確には南東)にあるとされ、それはつまり太陽神を表していて、日が沈み、太陽が見えなくなった西側には魔界があると考えられていました。

つまりニライカナイは琉球信仰の神(太陽神)と祖先信仰を象徴するこの世には存在しない世界を表しているのです。

今でも沖縄ではうちなーぐち(沖縄の方言)で太陽を「ティダ」と呼び、信仰の対象としてとても大切に思っています。

「ティダはあしたに東海のティダが穴から昇り、西の海に沈み、海底や地底の世界を通り再びティダが穴から昇る」

そして「生(太陽が見えている世界=良)は信仰しても良い」が「沈む(太陽が沈んだ後の魔界=悪)は拝んではならない」と考え、太陽を人間の生と死に重ねて捉えていました。この考えは今も変わらず沖縄の生活の中に深く根付いています。

 

夕日 sunset

ニライカナイ信仰の始まり

そのニライカナイ信仰の始まりの地には諸説あるのですが1番有名なのが、琉球国由来記という沖縄の古典に書かれている久高島のイシキ浜です。ニライカナイの1番偉い神さまである「東リ大主(アガリウプヌシ)」が降り立った場所と書かれています。今でも久高島のイシキ浜ではウプヌシガナシー(健康祈願)というお祭りが開催されています。その後、東リ大主(アガリウプヌシ)がアマミキヨに琉球王国づくりを命じ、アマミキヨが浜比嘉島のヤハラヅカサに降り立って琉球王国(琉球列島の島自体を)作ったのが琉球開闢七御嶽(りゅうきゅうかいびゃくななうたき)だと言われています。

これらは研究者が少なく書物もほとんどないため、アマミキヨが最初に降り立った場所にもいくつかの諸説があります。また、天照大神(アマテラスオオミカミ)や大国主命(オオクニムシノミコト)など本土の神話と共通する部分がとても多いので本州の神話が持ち込まれ、何らかの政治的意図があってアレンジされたのではないかと考える研究者もいます。それによるとアマミキヨの語源は奄美大島の「アマミ」であり、その根拠になるのが琉球王国に属していた奄美大島は薩摩藩の侵略を受けていたからです。

 

さて、このニライカナイや琉球信仰について調べてみるとオボツカグラという言葉が度々でてきます。そこでオボツカグラについても調べてみることにしました。

 

オボツカグラとは

オボツカグラという言葉の意味は、オボツは天上でカグラは神のいる場所です。その言葉が載っているのは琉球王国の書物『中山世鑑』で、「オボツカグラの神と申すは、天神也」と書かれています。これを簡単に言うと「オボツカグラは天の神様」という事です。神様は上だとすると一般の人々は地(下)にいたと考えられます。つまり、ニライカナイが左右(西と東)の世界だったのに対し、オボツカグラは上(下)の世界を表すと考えられます。

 

オボツカグラとニライカナイのある場所

これまで分かった事を整理するとニライカナイは地平線を軸とした横軸の世界オボツカグラは天空を表す縦軸の世界です。共にこの世には存在しない(神様の)世界の事です。

 

このようにかつての沖縄の神話はオボツカグラとニライカナイがあったのですが、現在耳にするのはニライカナイのみです。その理由を私なりに考えてみました。

簡単にいうとオボツカグラは主に琉球王朝時代に王様が国を治める為に政治目的で使用されたのに対し、ニライカナイは一般の人々が信仰しました。よって琉球王朝が滅んだ為にオボツカグラを使用する人がいなくなってしまったのでほとんど耳にすることがなくなったと考えられます。

詳しくは沖縄の本当の神話2【沖縄独自の神話ー琉球開闢七御嶽(りゅうきゅうかいびゃくななうたき)】にも書く予定ですので興味のある方は読んでみてください。

★沖縄の本当の神話2【沖縄独自の神話ー琉球開闢(りゅうきゅうかいびゃく)七御嶽(ななうたき)】

2021年3月3日

Posted by hana